本わさびの機能性成分「ヘキサラファン」に高齢者の記憶力改善効果があることが明らかに
本わさびがもつ健康・美容パワーにいま注目が集まっています。和食を代表する食材と言っても過言ではない本わさびですが、近年はその優れた機能性が様々な研究によって明らかになっています。本わさびの根茎や根にわずかに含まれる機能性成分ヘキサラファン(6-MSITC)には、活性酸素の発生を抑える抗酸化作用があることが知られています。残念ながら一般的なチューブわさびにヘキサラファンは含まれておらず、本わさびの根茎部分をすりおろして喫食することやヘキサラファンが含まれるサプリメントや機能性表示食品などを活用することで摂取が可能です。
わさ研
本研究の意義
物を覚えたり判断したりする脳の働きを認知機能(記憶力や処理速度や抑制能力など)と呼びます。この認知機能は、加齢とともに低下していき、これは高齢者の社会活動を困難にする要因の1つです。日本だけでなく世界各国でも少子高齢化は進んでおり、認知機能の維持や改善は現代を生きる我々の大きな関心事と言えます。
研究の目的と手法
ヘキサラファンが高齢者の認知機能に与える効能の有無を解明すべく、健康な高齢者を対象とした二重盲検無作為対照試験(ダブルブラインドテスト)を実施しました。
健康な高齢者72名(平均年齢 65.43 歳、男性19名、女性 53 名)を対象に、①ヘキサラファンを含むサプリメントを摂取する「ヘキサラファン群」(ヘキサラファンを含むサプリメントを1日1粒(ヘキサラファン 0.8 mg含有)、12週間摂取するグループ)と②ヘキサラファンが入っていないプラセボサプリメントを摂取する「プラセボ群」(②ヘキサラファンが一切入っていないプラセボサプリメントを、1 日 1 粒、12 週間摂取するグループ)に分け、無作為比較対照実験を実施しました。
対象者は各群のサプリメントを1日1粒12週間摂取し、認知機能検査を実施しました。20文(節)の文章を聞き、内容を覚えて思い出す「論理的記憶」、顔写真と名前の組み合わせを覚える「顔名前記憶」、数字列を聞いてその逆の順番で回答する「逆唱」を実施し、各スコアを比較しました。
研究の結果と考察
解析の結果、毎日ヘキサラファンを摂取していたグループの方がエピソード記憶(検査名:論理的記憶と姓名の記憶)、作業記憶(検査名:逆唱)の成績が有意に向上することが明らかとなりました。
本研究によって、本わさびに含まれるヘキサラファンの継続的な摂取が高齢者の記憶力の向上に効果的であることが解明されました。この成果は「Nutrients」という欧州の栄養科学分野の科学誌に掲載(2023年10月30日付)され、Forbesを始め国内外で多数の媒体でも取り上げられています。
脳科学分野で非常に注目されているヘキサラファンの効力については、今後もますます研究が進められていく予定です。